チェロ弾きの平日~日々の記録とひとりごと
611の日おめでとうございます!
これ以上できる自信がないので、こちらにとりあえず置いておきます。
いろいろ考えましたが、これはこれ、それはそれ、ということで、昨年611の日のお題とはやはり切り離すことにしました。
一応ネタはあって、書きかけにはなっているので、最後まで頑張る。
そして誓い3部作にしてやる(違)
ということで、ゆきさまよりいただきました『「キス」に関する話、もしくは「真夜中のミサ曲」が何か絡んでいるお話』です。残念ながら『真夜中のミサ曲』に絡めることはできませんでしたが(藤丸は宗教曲に疎くてですね、申し訳ないのですが初めて知りました。調べたのですが、うまく形にすることができず申し訳ありません…)
夜までにちゃんとサイトにあげられるといいな。
今日は他のサイト様もめぐりたいわ~。
某方のサイトお誕生日お祝いだけは朝行ってまいりました。眼福。
これ以上できる自信がないので、こちらにとりあえず置いておきます。
いろいろ考えましたが、これはこれ、それはそれ、ということで、昨年611の日のお題とはやはり切り離すことにしました。
一応ネタはあって、書きかけにはなっているので、最後まで頑張る。
そして誓い3部作にしてやる(違)
ということで、ゆきさまよりいただきました『「キス」に関する話、もしくは「真夜中のミサ曲」が何か絡んでいるお話』です。残念ながら『真夜中のミサ曲』に絡めることはできませんでしたが(藤丸は宗教曲に疎くてですね、申し訳ないのですが初めて知りました。調べたのですが、うまく形にすることができず申し訳ありません…)
夜までにちゃんとサイトにあげられるといいな。
今日は他のサイト様もめぐりたいわ~。
某方のサイトお誕生日お祝いだけは朝行ってまいりました。眼福。
カタカタとなる蓋の音に火を止めて、ドリッパーに少量のお湯を注ぐ。コーヒーを蒸らす間のほんの僅かに訪れた静寂に、ラジオの音が聞こえてくる。
普段はニュースくらいしか聞くことのないラジオのスピーカーから、いつになく宗教曲が流れてきて、リザは耳を凝らした。
コーヒーの香りがたって、リザは三人分のコーヒーを落とす。リザの家に入り浸っていて既に『お客様』とは言い難い上官専用のマグカップは、リザと色違いの少々大きめなもので、二つで約三人分だ。
彼がリザの家に来始めたころは、まだ客用のコーヒーカップを使用していたが、あまりにも入る量が少なくて何度も淹れなおしていたので、いつの間にか彼自身が新しいものを持参した。ご丁寧にもリザとお揃いで、一体どこで手に入れてきたのだろうかと妙なところでマメな上官に、呆れたものだ。
マグカップになみなみと注いだコーヒーを持ってソファーに向かうと、彼は肘かけに肘をついてラジオに耳を傾けていた。流れてくる宗教曲の名前は何と言ったか思い出せずとも、最近のアメストリス国の曲でないことは間違いない。
ブラッドレイ政権が覆され、絶たれていた隣接国との交流が少しずつ行われるようになってくると、外国の文化や風俗も同時に流れ込んでくる。その中には、その昔アメストリス国にあったもので規制されていたものが、逆輸入する形で戻ってくることもあるから面白い。
こういった宗教曲も、気づけば頻繁にラジオで流されるようになった。
「珍しいですね」
そう声をかけると、彼はリザの方を向く。何のことかと一瞬迷ったような顔をしたが、合点したのか「ああ」とラジオを見た。
「どうぞ」とコーヒーをサイドテーブルに置くと、「ああ、すまない」と破顔する。
「珍しいか?」
マグカップを手に取った、隣に腰を下ろしたリザを見遣る。広くない部屋に置かれた1.5人掛けのソファーは、二人で座るには少々狭く、自然と密着する形になる。
「あまりそういった趣味はないでしょう?」
宗教曲の中には有名な音楽家の作った派手なものもあるが、今流れてくるのはどちらかというと信仰心の強い静かで厳かな雰囲気の曲だ。静かな夜に聴いても、心が乱されることがない。
「いや、信仰する神がいない我々アメストリス国民は、信じるべき軍、キングブラッドレイが覆されて、何を信じるのかと思ってね」
そういってコーヒーを一口すすると、また彼は話を進める。
「イシュヴァールの人々は、神を信じることによって強大な力や絆を発揮している。神を廃され、信ずるべき神がいないというのは、人々にとってはやはり迷いの元になるのだろうか」
アメストリスの建国においてまず排除されたのが、神だった。不必要だったというよりは、そのお元になった『フラスコの中の小人(お父様)』が神の位置を目指していたと言うべきだろうか。
元々はアメストリスの各地域でもさまざまな宗教が存在しており、それを信仰するかどうかは個人の自由としても、神の存在が人々の生活にも密接していたことは明らかだ。アメストリスにもそこかしこにその片鱗が見える。実際に、新興宗教ができたことも、またそれがきっかけで暴動が起きたこともあった。それがたとえ仕組まれたことであったとしても、信仰心が使われた事は事実だ。
「宗教だけが幸せとは限らないと思います」
宗教が原因で争いが起こることも、否定できませんし、とリザは付け加える。かつて我々が行った残酷な戦いもまた、その線引きは宗教であった。
「たとえ信ずるべき神やそれに替わるものがなくても、他に誓うべき相手はたくさんいるでしょう。家族、友人、師匠…他にも誓う相手はいると思います」
これはリザの素直な気持ちだ。一人のアメストリス国民として、今までそうやって生きてきた。これからもきっとそうやって生きていくだろう。
コトリ、とマグカップを再度テーブルに置く音が響き、彼がこちらを向く。
「では、君は誰に?」
「私は貴方に誓います、Sir」
真面目に、けれどもほんの少しだけその視線に不安を含ませた彼の問いに迷いもなく即答すれば、彼は驚きつつも満足げな顔をする。
「私は、君に誓う。昔も、今も、これから先も」
そう言って彼の手が頬に触れた。その前触れにそっと目を閉じれば、彼のキスが降ってくる。軽いわけでもなく、かといって激しいものでもないそれは、誓いを立てるような丁寧なもので。
厳かなキスは、甘く苦いコーヒーの味がした。
普段はニュースくらいしか聞くことのないラジオのスピーカーから、いつになく宗教曲が流れてきて、リザは耳を凝らした。
コーヒーの香りがたって、リザは三人分のコーヒーを落とす。リザの家に入り浸っていて既に『お客様』とは言い難い上官専用のマグカップは、リザと色違いの少々大きめなもので、二つで約三人分だ。
彼がリザの家に来始めたころは、まだ客用のコーヒーカップを使用していたが、あまりにも入る量が少なくて何度も淹れなおしていたので、いつの間にか彼自身が新しいものを持参した。ご丁寧にもリザとお揃いで、一体どこで手に入れてきたのだろうかと妙なところでマメな上官に、呆れたものだ。
マグカップになみなみと注いだコーヒーを持ってソファーに向かうと、彼は肘かけに肘をついてラジオに耳を傾けていた。流れてくる宗教曲の名前は何と言ったか思い出せずとも、最近のアメストリス国の曲でないことは間違いない。
ブラッドレイ政権が覆され、絶たれていた隣接国との交流が少しずつ行われるようになってくると、外国の文化や風俗も同時に流れ込んでくる。その中には、その昔アメストリス国にあったもので規制されていたものが、逆輸入する形で戻ってくることもあるから面白い。
こういった宗教曲も、気づけば頻繁にラジオで流されるようになった。
「珍しいですね」
そう声をかけると、彼はリザの方を向く。何のことかと一瞬迷ったような顔をしたが、合点したのか「ああ」とラジオを見た。
「どうぞ」とコーヒーをサイドテーブルに置くと、「ああ、すまない」と破顔する。
「珍しいか?」
マグカップを手に取った、隣に腰を下ろしたリザを見遣る。広くない部屋に置かれた1.5人掛けのソファーは、二人で座るには少々狭く、自然と密着する形になる。
「あまりそういった趣味はないでしょう?」
宗教曲の中には有名な音楽家の作った派手なものもあるが、今流れてくるのはどちらかというと信仰心の強い静かで厳かな雰囲気の曲だ。静かな夜に聴いても、心が乱されることがない。
「いや、信仰する神がいない我々アメストリス国民は、信じるべき軍、キングブラッドレイが覆されて、何を信じるのかと思ってね」
そういってコーヒーを一口すすると、また彼は話を進める。
「イシュヴァールの人々は、神を信じることによって強大な力や絆を発揮している。神を廃され、信ずるべき神がいないというのは、人々にとってはやはり迷いの元になるのだろうか」
アメストリスの建国においてまず排除されたのが、神だった。不必要だったというよりは、そのお元になった『フラスコの中の小人(お父様)』が神の位置を目指していたと言うべきだろうか。
元々はアメストリスの各地域でもさまざまな宗教が存在しており、それを信仰するかどうかは個人の自由としても、神の存在が人々の生活にも密接していたことは明らかだ。アメストリスにもそこかしこにその片鱗が見える。実際に、新興宗教ができたことも、またそれがきっかけで暴動が起きたこともあった。それがたとえ仕組まれたことであったとしても、信仰心が使われた事は事実だ。
「宗教だけが幸せとは限らないと思います」
宗教が原因で争いが起こることも、否定できませんし、とリザは付け加える。かつて我々が行った残酷な戦いもまた、その線引きは宗教であった。
「たとえ信ずるべき神やそれに替わるものがなくても、他に誓うべき相手はたくさんいるでしょう。家族、友人、師匠…他にも誓う相手はいると思います」
これはリザの素直な気持ちだ。一人のアメストリス国民として、今までそうやって生きてきた。これからもきっとそうやって生きていくだろう。
コトリ、とマグカップを再度テーブルに置く音が響き、彼がこちらを向く。
「では、君は誰に?」
「私は貴方に誓います、Sir」
真面目に、けれどもほんの少しだけその視線に不安を含ませた彼の問いに迷いもなく即答すれば、彼は驚きつつも満足げな顔をする。
「私は、君に誓う。昔も、今も、これから先も」
そう言って彼の手が頬に触れた。その前触れにそっと目を閉じれば、彼のキスが降ってくる。軽いわけでもなく、かといって激しいものでもないそれは、誓いを立てるような丁寧なもので。
厳かなキスは、甘く苦いコーヒーの味がした。
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