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チェロ弾きの平日~日々の記録とひとりごと
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大変お待たせいたしました。11カ月…(汗)
昨年5月末に行いましたサイト6周年リクエスト企画の、星夜さんからのリクエスト。
『探し物をするロイアイ(単独でもOK) 』『ブラックハヤテとロイアイ 服選びをするロイアイ』
です。
リクエストを二ついただいていたのですが、勝手に一つにまとめさせていただきました。
もともとデートはリザさんの服選びだったということで(苦笑)
星夜さんにはいつもご迷惑ばかりおかけして本当に申し訳ありません(汗)

文章を書いたのが久しぶりで、
原型はできていたもののどうまとめていいかわからなくなって時間がかかってしまいました。
一度リセットして、書き直した次第です。
拙い出来で本当に申し訳ありませんが、本当にお待たせしました。
どうぞお納めくださいませ~!

つづきよりどうぞ。

--
拍手ありがとうございました♪





 あっ、と声を上げた時には既に遅かった。リザの手の中のキーケースから飛んだ金属は明らかに下に落ちたはずなのに、音一つ立たない。
 慌ててしゃがんで見るものの、その金属――それはリザの部屋の鍵であった――は影も形もない。もともと綺麗にしている自宅の玄関先で、そんなに目立つものが見当たらないわけがない。あるとすれば、家具の裏側か隙間に入ってしまったか。
 見間違いであってほしい、と願って手元のキーケースをもう一度見て見るが、そこに収められているのはやはり滅多に使うことのない鈍い光を放つ実家のボロ鍵と、こちらもまたあまり使われることのない預かり物の上官の鍵の2つのみであった。そして自宅の鍵が収まっていた部分には、壊れた金具だけが残っていた。おそらく使用頻度の高いものだけが劣化してしまったのだろう。

 この家の契約時に大家から渡されたこの家の鍵は、2つだった。1つは携帯用、もう1つは予備としてしばらく自宅に置いてあったが、いつの間にか彼の直属の上官の手に渡っていた。それに対してリザ自身も特に異論はなかったし、むしろ何かあった時のために信頼できる誰かに鍵を預けておくことは悪いことではないとも思っていたし、その逆も然りで冒頭で述べたように上官の鍵を預かっている。だから、手元にある鍵を紛失した今、頼れるのはもう1つの方で。
「やだ、もうとっくに大佐は家を出てしまっているわ」
 ふと壁掛けの時計が目に入り、そもそも、今出掛けようとしたのは、その上官との約束があったから。今日は珍しくプライベートの外出で、リザ自身も楽しみにしていた。彼が家を出てしまったであろう今、彼に連絡を取る術はない。かといって決して治安がすこぶる良いとは言えない東部の町で、たとえ取られて困るようなものは何もなくても、非常時でもない今、鍵を開けっぱなしで家を空けるほどの勇気をリザは持ち合わせてはいなかった。
 たとえこのまま家から出られず約束の場所にいけなかったとしても、何かあったのだろうと察した彼はしばらくのうちにやってくるだろう。だが、せっかくの休みにそんな無駄な心配させるわけにはいかない。
 くぅん、と愛犬がリザの周りをまわりながら、心配そうにすり寄ってくる。
「ハヤテ号」
 リザはしゃがみこんで、愛犬の視線をしっかりと捉えた。




「……で。鍵が見つからなかったからハヤテ号をこちらに寄こした、と」
「…はい」
「ハヤテ号が道に迷ったらとか、そもそもハヤテ号にその意思が伝わっていなかったらとか、そう言うことは考えなかったのか」
「…ハヤテ号なら大丈夫だと思ったんです」
 落ち込むリザに、ロイはわざとらしく咳払いをして続ける。
「ホークアイ中尉ともあろうものが、冷静さを事欠いてそういった曖昧な行為をもって物事を進めるとは、呆れたものだな」
「申し訳ありません」
 うなだれるリザに対して、ロイの方は切れ長の目じりが、半分下がっている。明らかに笑いを堪えているような表情にも、俯いたままのリザは気付かない。
「中尉、顔を上げたまえよ」
いかにも気まずい、といった面持ちで視線を合わせようとしないリザに対して、ロイは堪え切れずにくっと噴きだした。
「別に怒っているわけではないさ。ただ突然ハヤテ号だけが単独で走ってきたから、何があったのかと心配になっただけで」
 リザがもう一度謝罪の言葉を口にしようとすると、何もなければ別にいいとロイが遮る。
「しかし、驚いた。走ってくるハヤテ号の首元に光るものがあったから何かと思って見たら、中尉の自宅の家の鍵がついていたんだからな」
「えっ」
「何のメッセージかと思って慌てて来てみれば、玄関先はひっくり返ったようになっている。何事かと思ったぞ」
 そう言って差し出されたのは、その無くしたはずの鍵。
「鍵、ハヤテ号についていたんですか!」
「もう少しハヤテ号が勢いよく走っていたら落とすところだったな」
 そういえば、鍵を探しているときも、やたらとリザにすり寄りたがっていた。おそらくハヤテ号も何かまでは分からないまでも、首に違和感を感じていたに違いない。だからこそ、指示を受けたハヤテ号も慎重にけれども迅速にロイの元にたどり着いたのだろうから。
 気を使ったんだよな、とハヤテ号に声を掛けながらロイが頭をぐりぐりと撫でると、ハヤテ号は鼻をぴくぴくとさせて自慢げな顔をする。
「ハヤテ号、ありがとう。おまえは優秀ね」
その様子が愛おしくて、リザはハヤテ号の背中をたっぷりと撫でてやった。
 


「さてと。まずは、腹が減ったからどこかで食事でもしよう。それから新しいキーケースを探しに行くかな」
「いえ、そこまでお付き合いさせるわけには」
「いや、いいさ。今日はもともと君のものを見繕うつもりでいたからな」
 恐縮するリザにそう言い含めながらロイは手帳とペンを胸ポケットから出すと、すらすらと錬成陣を書く。そして使いこんであるリザのキーケースの金具だけを簡易的に直すと、先ほどの鍵をつけて自分のポケットにしまいこんでいしまった。
「中尉、君は早くそのあたりを片付けてしまいたまえよ」
 それまでは褒美代わりにハヤテ号と遊んでやるさ、そう言ってロイは部屋の奥に入って行った。



--
えーと。実話です。
ちょうど一年前のこと。
幼稚園の見送り時に玄関先でキーケースが壊れてどこかに飛んで行ったのに、音もしないし見つからない。
家族も全員鍵を持って出掛けてしまうし、慌てて実家に連絡して鍵を一度返してもらいましたが。
帰宅した次男が「手提げ袋の中に入ってたよ!」と差し出した時には、ほっとするやら、びっくりするやら。
そんな思い出の詰まった(?)話をロイアイ話というか、ハヤテ号活躍話に託してみました。
鋼の世界に携帯があったら、また違うお話になるんでしょうねぇ…

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