チェロ弾きの平日~日々の記録とひとりごと
初心に帰ったせいなのか、それとも忙しさがちょっと落ち着いたせいなのか、
はたまたロイアイ書いたせいか、
ちょっと文章が書けるようになったようなので、書き散らしてみました。
何気なくやった診断メーカーで出てきたものです。
この調子でリハビリできるといいんだけどな。
あなたは『寝癖を直すのを手伝う』千鶴のことを妄想してみてください。
https://shindanmaker.com/450823
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拍手ありがとうございました!
はたまたロイアイ書いたせいか、
ちょっと文章が書けるようになったようなので、書き散らしてみました。
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この調子でリハビリできるといいんだけどな。
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拍手ありがとうございました!
或る朝
それはいつもと変わらない、ある晴れた日の朝のことであった。
土方が朝餉の時間に広間に顔を出さないのは、よくあることである。今日もまた一向に顔を出す気配のない土方を呼びに行く指令が、局長である近藤から名目上は土方のの小姓である千鶴に出された(そうたいそうなものではないが、千鶴にとっては立派なし礼であった)。そうして土方の部屋に向かうのもまた、千鶴にとって常のことである。
土方の部屋の前まで来ると、千鶴は膝をついて「土方さん、雪村です。朝餉の支度が整いました」と告げた。そこまではいつもの通りである。
通常なら、「わかった、後から行く」やら「いらねぇ、そんな時間はねぇ」やら返事が返ってくるか、もしくはあまりに静かで一向に返事がないのでこっそりとのぞいてみると机に突っ伏して眠っていたなどということもあるが、今日は千鶴が声を掛けた途端にガタガタンとやけに大きな物音がした。相当慌てている様子である。
「土方さん…?」
訝しんで声を掛けるも、妙に慌てた声で「…千鶴か?」と返事が返ってくるのみだ。
「雪村です。土方さん、どうかなさったんですか?」
千鶴が障子に手を掛けると「ああ、待て!…いや、入ってすぐに障子を閉めろ」と中から返答があったので、千鶴は障子を必要最小限だけ開けてまるで猫のようにスルリと中に入ると、外から中の様子が伺えないようにすぐに障子を閉めた。
そして改めて土方の方に身体を向けると、そこには予想だにしない土方の姿があった。
文机の前に座るこの部屋の主の姿はいつもとかわらずピシッとしている。だが、その前髪があらぬ方向を向いていた。いつも人前では一分の隙も見せず、隊内では鬼と呼ばれ、街に出れば人斬りだのなんだのと怖れ慄かれ、また色街に行けば誰もが見惚れる色男と名を馳せている土方の、前髪だけが途中で折れ曲がって天を向いており、いつもは隠れている額が思いっきり表に出ている有様である。
そして文机にはいつものように広げられている筆と紙は端に追いやられ、どこから引っ張り出してきたのか、似合わぬ手鏡と櫛が散らかっていた。
千鶴は瞠目したあと、こみ上げてくる笑いを必死に耐えた。それでも吹き出しそうになる口元を両の手でふさぐ。
かわいい。
それが千鶴の素直な感想だった。いつも隙がないように見えるこの男の、稀に(特に沖田が絡んだときに)見せる少しばかり抜けた面が、千鶴は好きだった。
一方の土方は、苦虫をつぶしたような顔で、溜息を吐く。
「笑いたきゃ、笑え。突っ伏して寝てたら、こうなったんだよ」
千鶴に一切目を合わせようとせず、きまり悪い顔でそっぽを向く土方がますます可愛らしくて、千鶴は一歩前に出た。
「おはようございます、土方さん。見事に上を向いてますね」
そうして上を向いてしまった髪に無意識に手を伸ばすと、いつもなら即刻払われるところであるが、今日の土方はされるがままになっている。
少し触れてみると、前髪の途中からしっかり上向きに癖がついており、手で軽く撫でつけてもばねのように跳ねて元に戻る。これは少し梳いたくらいではなおりそうもない。熱く絞った手ぬぐいで蒸せばなおるだろうか。
「熱いお湯と、手ぬぐいをとってきます」
土方の髪から手を離すと、、千鶴は腰をあげる。
「おい、誰にも言うんじゃねぇぞ」
あまりに必死な顔でいうので、千鶴はあまりにも可愛らしくて笑うのも申し訳なくなり、まるで極秘任務を言い渡されたかのような心持ちで返答する。
「もちろん、この雪村、誰にも申しません」
そして、入ってきた時と同じように最小限だけ障子をあけると、今度は忍者のようにスルリと外に出ると、今度は静かに音を立てぬよう障子を閉めた。
廊下に出たところで、千鶴はハタと我に帰る。
土方さんの髪を触っちゃった…!
女子が成人男性の髪に触れるなど、とんでもないことである。けれども、千鶴はそれが嫌などころか、嬉しくて仕方がなかった。
先ほど触れた手をまじまじと見つめ、それからギュッと握り占めると、千鶴は勝手場の方に向かってパタパタと駆けていった。
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